特集記事 Reviews

#086 ビストロさいとう シェフ
齋藤 美三男さん

地元野菜使って地域に貢献したい
裏メニューがねりコレになった!


 2013年で100品を超えたねりコレ。ビストロさいとうの「練馬産キャベツの特製ロールキャベツ」も今年新たに認定された商品のひとつです。シェフの齋藤美三男さんによると、常連の老婦人のために作った特別メニューが人気となり、裏メニューとして出すようになったもの。

「黒毛和牛と黒豚のひき肉を練馬産キャベツで包み、赤ワインベースのソースで煮込んで1日おきます。さらに赤ワインを加えてソースを完成させます。昔のビーフシチューのような仕上がりですね」(シェフ)

 練馬産野菜を使うのは、地域への感謝の気持ちだと言います。

「練馬に何か貢献できればと。それに地域の野菜は、採れたてで新鮮。昔ながらの作り方を知る農家の方が、自分たちが食べる野菜の余剰を販売する、そういう野菜が一番おいしい。農薬も少なく、安全ですしね」(シェフ)

「農薬の多い野菜はボイルすると、においで気づくんです。ソースを作る途中でも、やり直しますね。それを出したら、料理人じゃないと思っているので」(シェフ)

 穏やかな物腰にも、芯のあるシェフ。奥さまの加代子さんはソムリエとして客席を、シェフは厨房を…と、二人三脚でやってきたビストロさいとう。江古田に店舗を構え、2013年で15年目を迎えました。

「学生街ですが、ニーズに合わせてパスタやご飯を出すと、フレンチとイタリアンの境目を崩してしまう。つぶれてもいい覚悟で、『ビストロの基本に忠実に』という信念を貫いてきました。徐々に地元の方にもご来店頂けるようになりましたね」(シェフ)

 そんな信念と心意気により、江古田で大人が楽しめる店として、愛されています。



子どもの頃から料理が大好き
試行錯誤でオリジナルが誕生する


 おふたりの出会いは、シェフ24歳、加代子さん21歳のときでした。

「夫がまだ修業時代、その店に客として私が食べに行ったんです。出会った瞬間、『ビビビッ!』と来て(笑)。『この人は晩年大成する。私がサポートするんだ!』と直感して、猛アタックしたんです」(加代子さん)

 その1年後に電撃結婚、まさに運命的! でも、仕事場では「シェフ」と呼び、公私はしっかり分けています。ソムリエの資格をとったのも、シェフのアドバイスからでした。一方、加代子さんはシェフに、「食育インストラクター指導員」の免許をとるようすすめます。互いを高め合う、素敵なご夫婦です!>

「夫は、料理が恋人なんですよ(笑)。休みなのに『あの子が火を入れてほしがってる』と、調理場に立ったり。料理の寝言を言うこともよくあるんですよ(笑)」(加代子さん)

 料理や食材を我が子のように愛しているシェフ。その愛情は、子ども時代に遡ります。

「小学2〜3年生の頃から、学校から帰ると真っ先に畑に行きました。旬の野菜の本当の味を、そこで覚えたんですね。練馬の野菜は、この頃食べた味に近いと思います。昔からレシピを見るのは好きじゃなくて。どうしたらこの味になるのか、自分のイメージで料理を作って試行錯誤するのが楽しい。そのなかから、オリジナルのメニューが生まれるんです」(シェフ)

「常連のお客様が病気になられて、『最後の晩餐』をオーダーされる機会がありました。その方の歴史の1ページに残るお料理を提供させて頂いたかと思うと、感慨深いですね。料理の大切さを改めて感じ、気が引き締まる思いでした」(シェフ・加代子さん)

 料理と真摯に向き合い続けるビストロさいとう。だからこそ、人生の節目に、大切な人と過ごしたくなるお店に選ばれるのだと感じました。

(2013年12月2日)

ビストロさいとうの外観。
江古田駅北口から約2分、
隠れ家的な雰囲気です


2013年発行の
ねりコレ冊子表紙


2013年ねりコレに認定された
練馬産キャベツの
特製ロールキャベツ



シェフの職人気質を
感じられる厨房


ワイン会、料理教室を
それぞれ月1回開催中


4テーブルとカウンター3席。
おふたりで営むのに
ちょうどいい席数とのこと


柔らかい人柄の奥様。
お話していると、
自然と癒されます


大好きな料理と猫の話に
なると止まらない!
優しいシェフ

プロフィール

齋藤 美三男さん

齋藤 美三男さん

1960年、福島県生まれ。練馬区在住。秋山徳蔵氏に憧れ、18歳で精養軒に入る(秋山氏が料理長を務めた日本初の西洋料理店)。当時は次々に新しいフランス料理店がオープンしていた時期で、それに触発され、青山のレストランに移る。その後、池袋で料理長を務め、パリのレストランで1年修業し、朝から晩まで働いた。カジュアルにフレンチを楽しめる空間を理想として、1998年に「ビストロさいとう」を江古田にオープンした。 妻の加代子さんも、同郷の福島出身。付き合いはじめてから、隣町同士だと知る。管理栄養士の資格を持ち、現在はソムリエとして、ホールを担当している。結婚30年目。 おふたりの練馬で好きな場所は、小竹向原駅を出てすぐにある「色っぽい!?しだれ桜」。その周辺には猫が多いのも魅力だとか。

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