特集記事 Reviews

#069 漫画家・イラストレーター
わだぺん。さん

練馬の“普通さ”が
地方読者の共感を呼ぶ


 「東京自転車少女。」というマンガをご存知ですか? タイトルどおり、4人の少女が自転車で東京めぐりをする物語で、練馬が舞台になっているんですよ。2巻までに登場したのは、桜台陸橋、豊島弁財天、石神井川・桜辻、富士塚など…、なじみの場所が改めて絵になると、とても新鮮です。「近くに住んでるけど知らなかった!」というレア情報も多く、練馬を再発見できるマンガなんです。

 「上京してからずっと桜台に住んでいる、というのが練馬を取り上げた最大の理由なんですけど(笑)。練馬って、いわば23区のなかでは一番“普通”ですよね。でもだからこそ、地方に住む読者にも共感してもらえると思ったんです。『うちの周りでも、探せば何かあるんじゃないか?』という感情を引きだせたらいいなと」

 と語るのは、作者のわだぺん。さん。車ほど速すぎず、徒歩よりも移動できる、“ほどよい距離感”が、自転車の魅力だと言います。ご自身も、普段から自転車で練馬を散策しているそうです。

 「取材では、普段なら絶対行かない道、選ばない店にあえて入るのがポイントですね。そうすると、変な路地に行き着いたりして、おもしろいものが見つかるんです。ここでは話せないようなコトにも、たくさん出会いました(笑)」

 見慣れた景色も、視点一つで違って見える…。物書きならではの視点で街をめぐっているわだぺん。さんが思う、練馬の魅力とは?

 「最初の印象が、『お年寄りが多いな』だったんです。でもお年寄りが元気というのは、住みやすい証拠ですよね。石神井川の排水溝を覗くとカニがいたり、得体のしれない生き物がたくさんいるのもおもしろいところですね」

 第2巻では、23区唯一の牧場、小泉牧場が登場していますね。

 「小泉さんの話にすごく感銘を受けたんですが…。北海道あたりでは起こり得ない問題として、近所から臭いの苦情があるそうです。よく東京は人間関係が希薄と言われますが、臭いがあるから、逆に関わらざるを得ない。むしろ小泉さんは、それをきっかけに、逆に地域とつながる必要性を感じたそうです」

 取材を通して、人と人とのつながりを痛感した…マンガでは、そんな問題まで踏み込んでいます。ちなみに、完成版を見せたところ、小泉さんは「農協でみんなに見せる!」と大喜びだったそうです。


「東京自転車少女。」は
「月刊コミック・アース・スター」
にて連載中。
第2巻は2012年7月12日発売


桜台陸橋からの景色は、
マンガになるとこんなふうに!
「光の河みたい!!」というセリフから
作者の感動が伝わってきます


主人公の一人、
島野いるかのラフスケッチ


もう一人の主人公、加藤さん。
彼女たちは、練馬区の
「私立豊珠高校」に
通っている設定


仕事道具のペンを
使うのは線画まで。
残りはPCで作業します


デスクは資料が山積み!
普段から古書店や図書館で、
歴史の資料などを
読んでいるそう


「お忍びで取材しづらくなるので」
という理由で、写真掲載はなし。
かわりに自転車少年時代の
写真をどうぞ(笑)

プロフィール

わだぺん。さん

わだぺん。さん

1979年岐阜県生まれ。1999年、江古田のアニメ製作会社に入社。原画、作画監督などを担当。2008年から、フリーのマンガ家、イラストレーターとして活躍中。上京当時から桜台在住で、一度だけ引っ越した先は2軒隣(笑)。練馬で好きな場所は桜台陸橋。会社時代、缶コーヒー片手によく物思いにふけった思い出の場所。当時は、沿線沿いにとしまえんの花火が見える穴場スポットだった。好きなお店は、江古田のシャノアール。同業者が多く、とても落ち着くそう。煮詰まったときに訪れ、「ここでダメなら終わりだ…」という「切り札」だとか。

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