特集記事 Reviews

#059 プチぶんか村 編集長
宮崎 直子さん

亡き母の思い出の桜で染めた
毛糸の美しい色に、びっくり!


 毎年10月に新作が加わる、ねりコレ。2011年度の発表を前に、2008年度のねりコレに選ばれた「学園桜染シリーズ」の製作者、宮崎さんにご登場いただきました!

 「学園桜染」という名前どおり、大泉学園通りの桜の落ち葉で染めたマフラーやハンカチなどの工芸品。二度と同じ染め色にはできない、自然な風合いが魅力です。

 「実家が福島県のいわき市で、裏庭にステキな桜の木があったんです。私が上京してから、母は毎年荷物に混ぜて、桜の枝を送ってくれていました。でも母が亡くなって、家を取り壊すことになって…。桜を何かの形に残したくて、葉で毛糸を染めてみたんです。そしたら、初めてやったのに、驚くほどキレイな色が出て! それから、いろいろと染め方を研究するようになりました」

 宮崎さんいわく、染め方はとってもカンタン! キレイな落ち葉を拾い、洗って煮出し、毛糸や布を入れるだけ。確かにこれなら、誰でもできそうです。

 「ポイントは、テクニックより心です。『キレイに染まってね~』と声をかけながら、愛情こめて煮ると、不思議とキレイに染まるんですよ。逆に、適当にやると、やっぱり適当な色しか出ない。染めにも、人の心が表れるんですね。これを『ねりコレ』に応募にしたのは、多くの人に桜染を試してもらいたいから。本当に手軽ですから、ぜひみなさん、試してくださいね!」

 自分の好きな桜で、染物を作る…これぞ日本人のロマンですね!



都県境ならではの文化の融合!
行政の区分では割り切れない


 桜に並々ならぬ愛情をそそぐ宮崎さんから見て、大泉学園の桜の魅力とは?

 「1年半、毎日車で学園通りを行き来した時期があったんです。その時、桜の時期はもちろんですけど、それ以外にも、四季折々で表情が違うことに気づいて。たとえば葉桜になりかけの時期は、花芯の赤と、葉の緑のグラデーションが美しい。開花が近づくと、木がピンクなんですよ。それがまるで桜自身が『咲くぞ!』とメッセージを送っているようで…。大泉学園の桜並木は、練馬区内で一番大好きな場所です」

 宮崎さんのお住まいは、大泉からすぐの新座市。埼玉と東京の区境に住んでいることがきっかけで、『プチぶんか村』という情報紙を、2か月に1度、2000年から発行し続けています。

 「生まれ故郷のいわき市は、関東と東北の境。上京した直後は多摩川の境に住み、引っ越した先も格子戸を開けたら別の区…たまたまですけど、“境目人生”を送ってきたんです(笑)。都県境というのは、どうしても中央より後回しにされがちなんですけど、文化が交わる区境だからこその面白さがある。『プチぶんか村』は行政界を超えた地域文化を紹介していく場です」

 旅行図書の編集をしていた前職からあわせ、四半世紀以上、地域の取材に携わってきました。そんな宮崎さんから見て、“都県境”である大泉学園の魅力とは?

 「まず、『学園』という地名に品位が漂っていますよね。私が今まで出会ってきた大泉の方達も、やっぱり品格を持ってらっしゃいました。この街を好きな人が多い、というのもいいですね。大人が楽しんでいると、子どもも自然と楽しんで、ついてきてくれる。いい環境は、将来にもつながると信じています」

 ちなみに『プチぶんか村』は、企画・編集・取材・執筆、そして印刷まで、すべてたった一人でこなしているそう! もはや日常=取材で、何をしていても企画につなげる思考ができているとか。このバイタリティの源とは、なんなのでしょうか?

 「登山に似てるのかなと思うんです。頂上まで登り切った時は、達成感がありますよね。私も、発行するまでは土壇場まで苦しみます。でもいざ発行となった瞬間、今までのプレッシャーがスーッと晴れて、充実感が残る…その瞬間がサイコーなんです(笑)」

 普段取材する側だから恥ずかしい…とはにかみつつ、興味深い話をたくさん語ってくれた宮崎さん。尽きることないお話の端々に、桜と、そして地域への愛がにじみ出ていました。
(2011年9月1日更新)

宮崎さんのねりコレ作品
学園桜染シリーズ」。
軽くてあったかいので
ご年配の方にも人気です


大泉学園の桜並木。
毎年10~11月、
落ちた葉を拾っています
(写真提供:プチぶんか村)


桜の落ち葉で染めた毛糸玉。
微妙な色の違いも、また楽しい
(写真提供:プチぶんか村)


今はなき実家の桜。
「毛糸の色と写真で残せた
だけでも十分」と宮崎さん
(写真提供:プチぶんか村)


毎年、「わたしのさくら展」を
はじめ、様々な桜イベントを主催。
写真はJ.CITYギャラリー
(撮影者:松本立夫氏)


取材場所は、大泉学園町にある
洋菓子のナカタヤさん。
『プチぶんか村』の
協力者の1 人です
以前、ねりま人でも紹介


プチぶんか村の1年分。
毎年2・3月号は桜特集。
紙の色はピンク色に
決めているとのこと


プチぶんか村の中面。
宮崎さんの思いやアツさが
行間から伝わってきます


「取材テーマは次から次へと
溢れてきて、
一生でやりきれるかしら…」
と語る宮崎さん。
とっても若々しくて情熱的です!

プロフィール

宮崎 直子さん

宮崎 直子さん

1950年福島県平市(現いわき市)生まれ。大学入学と同時に上京、日本交通公社(現JTB)に入社し、旅行図書の編集に携わる。退社後、『OZかわら版』『Oh!かわらばん』編集長などを経て、ライン出版を設立。2000年に埼玉⇔東京の文化情報紙『プチぶんか村』を創刊。2か月に1回の出版を続けている。編集・出版プロデュース、タウンコーディネーターとしても活動中。『るるぶ練馬区』には制作協力として参加した。多忙のかたわら、ねりコレ「学園桜染シリーズ」の製作を自身で続けている。日本櫻学会会員。
プチぶんか村

ねりま人一覧