特集記事 Reviews
#018 カタクリ指導員
小泉佳一さん・宮澤榮太郎さん
東京23区で唯一!
カタクリが群生する
「清水山憩いの森」
今年もカタクリの花を楽しめる季節が近づいてきました。カタクリといえば、埼玉県などのハイキングコースや東北地方などでよく見られますが、東京23区ではここ、清水山憩いの森だけが大規模に自生し群生しているとのこと。そこで今回は、本格的な開花シーズンに先立ち「カタクリ指導員」の小泉佳一さんと宮澤榮太郎さんにお話をうかがいました。
カタクリの花はまだ咲いていないので、写真で見せていただきました。えっ、区内のこんな身近な所で、これほどのカタクリの群生が見られるとは…驚きました!
小泉「カタクリは“早春の妖精たち”と言ってね、春の訪れを告げる花として北国などではポピュラーですよ。たまたまここは武蔵野の雑木林で北向き斜面、夏は木陰で涼しく、冬は日当たりがいいから、カタクリが生息しやすい環境なのです。清水山の妖精たちが6枚の花びらを開いてくれる日も間もなくですよ!」
清水山憩いの森は東京都名湧水57選のひとつ。カタクリが育つには湿り気も必要で、とても好条件だったんですね。
いちばんの見ごろはいつですか?
宮澤「毎年データを取っているのですが、だいたい3月末から4月上旬がベストですね」
小泉「桜(ソメイヨシノ)と同じ頃、と覚えていただけたらいいですね。4月中旬まではなんとか花が楽しめると思いますよ」
こう言いながら、平成13年のレポートをサッと取り出す宮澤さん。カタクリのガイドさんというより、研究家という感じです(笑)。
東京でカタクリを見られる場所はここだけなのですか。
宮澤「近くの赤塚植物園や調布・深大植物園、清瀬方面でも見ることはできますが、23区内でこれほど大規模に自生して咲くのは、唯一ここだけです」
小泉「ほら、これ見たことないでしょ。カタクリの発芽、赤ん坊ですよ! 糸と呼んでいます。2006年に八坂小学校の子どもたちと少しばかり種を蒔いてみて、それが出たの。今年も蒔きますよ~。カタクリはアリに種まきを頼んでいるのですが、その代わりを子どもたちと一緒にやる『蟻さんプロジェクト』です」
あざやかな黄緑色カタクリの、もやしにも似た小さな芽がニョキッと土から顔を出している写真を見せてくれました。地域の子どもたちと、こんなすてきな野外活動をされているのですね。カタクリが種から咲くまでに、なんと7~8年もかかるとか! 私たちが目にしている花は、長い時間をかけて生き残ってきた、本当に貴重な1株なんですね。
これが清水山ならではのカタクリ!
手塩にかけた我が子を
けなさないで~!?
清水山憩いの森の総面積は約8000平方メートル、その約半分の広さがカタクリの生育地で、その株数は約30万株と言われ、半数近くが毎年交替で花を咲かせてくれるそうです。
小泉「ここのカタクリはほとんどが薄紅色や淡いピンク色ですが、中には白い花が咲くことがあります。それはめずらしいから人気でね、清楚できれいですよ~」
宮澤「でもね、東北地方などに咲くカタクリはもっと色が濃いんです。それで、カタクリをあちこちで見てきた方は、ここのを『色が薄い』とか『小さい』とかおっしゃる。なんだかけなされたみたいで、カリカリきちゃったよ(笑)」
手塩にかけて育てた我が子にケチをつけられた、父親の心境でしょうか(笑)。
小泉「毎年『カタクリサミット』という自然愛好者の研究イベントがあるんですが、参加した岩手の友人がここの花を見て『上品なカタクリですね』とおっしゃって。だから『そうでしょう、そうでしょう!』と言っておきました(笑)」
淡紅色で、小ぶりで可憐な姿こそ、清水山ならではのカタクリなのでしょうね。
「カタクリ指導員」…
実地で学べる奥深い仕事
練馬区が憩いの森を本格的に管理するようになったのは昭和50年、そして緑化協力員制度が昭和53年に発足。多くの緑化活動が始まり、これが二人の「カタクリ指導員」以前の活動とか。このお仕事をされて小泉さんは今年で7年目、宮澤さんは10年目になるそうです。
宮澤「そろそろ引退したいと思いながら、あっという間に10年経ってしまいました。以前カメラマンがカタクリの撮影に来たときの話なんだけどね、花に朝露がかかっていると写真映えするでしょ。だからそのカメラマンがカタクリにしずくを垂らしたの。そしたらせっかく咲いていたのにしぼんじゃって(笑)。面白いから黙って見ていたんだけどね」
カタクリは水がかかるとしぼむものだそうです。雨の日や、夕方になると花びらも閉じてしまいます。花びらをかがり火のように反り返らせ、うつむいて咲くのは、晴れている日中のみ。でも、なぜうつむいて咲くのでしょう?
小泉「花粉を運んでくれる虫がとまり、奥の蜜を吸いやすいためと言われています。カタクリはユリ科で花びらは6枚、その付け根にもうひとつ花模様があり、これで虫たちを誘います。カタクリ見物の方に花の中を見ていただくときは、花を上に向けると花茎が折れちゃうので長い柄のついた鏡をお貸ししています。あっ、でも他の目的では使わないようにね(笑)」
通称カタクリミラー、素晴らしいアイディアです!
最後に…カタクリの花以外の場所では、どんなところがお気に入りですか?
宮澤「旭町に住んで40年だからね、やっぱり旭町のはんの木緑地かな。トウキョウダルマガエルやアズマヒキガエル、クロスジギンヤンマなどがいる貴重な場所で、ザリガニやトンボなどもたくさんいるんですよ」
小泉「やっぱり地元の大泉学園の桜並木です。カタクリと違って、桜は昼間じゃなくてもいいからね(笑)。近くの沖縄料理のお店の2階からは、桜がきれいに見えるの。散歩して、そこでお酒を飲むときは最高ですね」
カタクリを大切にしたいという思いにあふれ、身近な草花や生きものなど自然にあるものを見守り続けたい…、その姿勢をプライベートでも遺憾なく発揮されているナチュラリストの小泉さんと宮澤さん。4月初めにはぜひカタクリ指導員さんに会いに…いえ、カタクリを見に行ってみましょう。晴れた暖かい日に!
*練馬区のホームページで「清水山憩いの森/カタクリ情報」が公開されています。
カタクリが群生する
「清水山憩いの森」
今年もカタクリの花を楽しめる季節が近づいてきました。カタクリといえば、埼玉県などのハイキングコースや東北地方などでよく見られますが、東京23区ではここ、清水山憩いの森だけが大規模に自生し群生しているとのこと。そこで今回は、本格的な開花シーズンに先立ち「カタクリ指導員」の小泉佳一さんと宮澤榮太郎さんにお話をうかがいました。
カタクリの花はまだ咲いていないので、写真で見せていただきました。えっ、区内のこんな身近な所で、これほどのカタクリの群生が見られるとは…驚きました!
小泉「カタクリは“早春の妖精たち”と言ってね、春の訪れを告げる花として北国などではポピュラーですよ。たまたまここは武蔵野の雑木林で北向き斜面、夏は木陰で涼しく、冬は日当たりがいいから、カタクリが生息しやすい環境なのです。清水山の妖精たちが6枚の花びらを開いてくれる日も間もなくですよ!」
清水山憩いの森は東京都名湧水57選のひとつ。カタクリが育つには湿り気も必要で、とても好条件だったんですね。
いちばんの見ごろはいつですか?
宮澤「毎年データを取っているのですが、だいたい3月末から4月上旬がベストですね」
小泉「桜(ソメイヨシノ)と同じ頃、と覚えていただけたらいいですね。4月中旬まではなんとか花が楽しめると思いますよ」
こう言いながら、平成13年のレポートをサッと取り出す宮澤さん。カタクリのガイドさんというより、研究家という感じです(笑)。
東京でカタクリを見られる場所はここだけなのですか。
宮澤「近くの赤塚植物園や調布・深大植物園、清瀬方面でも見ることはできますが、23区内でこれほど大規模に自生して咲くのは、唯一ここだけです」
小泉「ほら、これ見たことないでしょ。カタクリの発芽、赤ん坊ですよ! 糸と呼んでいます。2006年に八坂小学校の子どもたちと少しばかり種を蒔いてみて、それが出たの。今年も蒔きますよ~。カタクリはアリに種まきを頼んでいるのですが、その代わりを子どもたちと一緒にやる『蟻さんプロジェクト』です」
あざやかな黄緑色カタクリの、もやしにも似た小さな芽がニョキッと土から顔を出している写真を見せてくれました。地域の子どもたちと、こんなすてきな野外活動をされているのですね。カタクリが種から咲くまでに、なんと7~8年もかかるとか! 私たちが目にしている花は、長い時間をかけて生き残ってきた、本当に貴重な1株なんですね。
これが清水山ならではのカタクリ!
手塩にかけた我が子を
けなさないで~!?
清水山憩いの森の総面積は約8000平方メートル、その約半分の広さがカタクリの生育地で、その株数は約30万株と言われ、半数近くが毎年交替で花を咲かせてくれるそうです。
小泉「ここのカタクリはほとんどが薄紅色や淡いピンク色ですが、中には白い花が咲くことがあります。それはめずらしいから人気でね、清楚できれいですよ~」
宮澤「でもね、東北地方などに咲くカタクリはもっと色が濃いんです。それで、カタクリをあちこちで見てきた方は、ここのを『色が薄い』とか『小さい』とかおっしゃる。なんだかけなされたみたいで、カリカリきちゃったよ(笑)」
手塩にかけて育てた我が子にケチをつけられた、父親の心境でしょうか(笑)。
小泉「毎年『カタクリサミット』という自然愛好者の研究イベントがあるんですが、参加した岩手の友人がここの花を見て『上品なカタクリですね』とおっしゃって。だから『そうでしょう、そうでしょう!』と言っておきました(笑)」
淡紅色で、小ぶりで可憐な姿こそ、清水山ならではのカタクリなのでしょうね。
「カタクリ指導員」…
実地で学べる奥深い仕事
練馬区が憩いの森を本格的に管理するようになったのは昭和50年、そして緑化協力員制度が昭和53年に発足。多くの緑化活動が始まり、これが二人の「カタクリ指導員」以前の活動とか。このお仕事をされて小泉さんは今年で7年目、宮澤さんは10年目になるそうです。
宮澤「そろそろ引退したいと思いながら、あっという間に10年経ってしまいました。以前カメラマンがカタクリの撮影に来たときの話なんだけどね、花に朝露がかかっていると写真映えするでしょ。だからそのカメラマンがカタクリにしずくを垂らしたの。そしたらせっかく咲いていたのにしぼんじゃって(笑)。面白いから黙って見ていたんだけどね」
カタクリは水がかかるとしぼむものだそうです。雨の日や、夕方になると花びらも閉じてしまいます。花びらをかがり火のように反り返らせ、うつむいて咲くのは、晴れている日中のみ。でも、なぜうつむいて咲くのでしょう?
小泉「花粉を運んでくれる虫がとまり、奥の蜜を吸いやすいためと言われています。カタクリはユリ科で花びらは6枚、その付け根にもうひとつ花模様があり、これで虫たちを誘います。カタクリ見物の方に花の中を見ていただくときは、花を上に向けると花茎が折れちゃうので長い柄のついた鏡をお貸ししています。あっ、でも他の目的では使わないようにね(笑)」
通称カタクリミラー、素晴らしいアイディアです!
最後に…カタクリの花以外の場所では、どんなところがお気に入りですか?
宮澤「旭町に住んで40年だからね、やっぱり旭町のはんの木緑地かな。トウキョウダルマガエルやアズマヒキガエル、クロスジギンヤンマなどがいる貴重な場所で、ザリガニやトンボなどもたくさんいるんですよ」
小泉「やっぱり地元の大泉学園の桜並木です。カタクリと違って、桜は昼間じゃなくてもいいからね(笑)。近くの沖縄料理のお店の2階からは、桜がきれいに見えるの。散歩して、そこでお酒を飲むときは最高ですね」
カタクリを大切にしたいという思いにあふれ、身近な草花や生きものなど自然にあるものを見守り続けたい…、その姿勢をプライベートでも遺憾なく発揮されているナチュラリストの小泉さんと宮澤さん。4月初めにはぜひカタクリ指導員さんに会いに…いえ、カタクリを見に行ってみましょう。晴れた暖かい日に!
*練馬区のホームページで「清水山憩いの森/カタクリ情報」が公開されています。
(2008年3月3日更新)
カタクリの発芽。
2年目にカタクリらしい葉に
なるそうです。
アルビノといって固有の色素が
失われて白くなったもの。
数万株に一つという貴重な白い花。
花びらの付け根の花模様は、
蜜標(ハニーガイド)と呼ばれ、
虫たちを誘います。
プロフィール
小泉佳一さん・宮澤榮太郎さん
小泉佳一さん(写真左)
カタクリ指導員として7年目。
練馬区の環境活動団体・大泉みどり会会長
練馬区大泉学園町在住
宮澤榮太郎さん(写真右)
カタクリ指導員として10年目。
練馬区の環境活動団体・光が丘エコクラブ代表
練馬区旭町在住