辛いだけじゃない。スパイスの奥深さを楽しめる中華料理店
豊島園駅のほど近くにある四川中華料理のお店「111」。看板メニューは担々麺と麻婆豆腐で、ねりコレ2026に選ばれた四川式麻婆豆腐は、ほどよい辛さの中に旨みや甘み、複雑な香りが感じられるのが特徴です。見ているだけでも身体がぽかぽかと温まってきそうな一皿を作っているのは店主の吉冨さん。専門学校を卒業後、横浜中華街の有名店「萬珍樓」で修業を積み、その後は西麻布の高級中華店で四川料理の腕を磨いた中華一筋の料理人です。そして、高級店の本格的な味を気軽に楽しんでもらえる自分のお店を持ちたい、という想いから2022年に「111」をオープンさせたのです。「みんなが入りやすいお店にしたかった」という吉冨さんの言葉通り、構えすぎないシンプルな外観、ラーメンのイラストが入った袖看板などふらっと立ち寄りたくなる店構えに親しみがわきます。
時間を惜しまず調味料も手作りで
「うちは担々麺と麻婆豆腐でラー油を使い分けているんです。料理に合わせてラー油は3種類作ってますよ。どれも自家製です」と、事もなげに話してくれた吉冨さん。お店が休みの日は仕込みの時間。4Lの油に大皿いっぱいのスパイスを入れ、弱火にかけてじっくりと香りを移します。そして、火からおろしたラー油は落ち着かせるため1週間寝かせてようやく完成するのです。
麻婆豆腐だけでも、なんと12種類以上のスパイスを使用。お店には唐辛子、花椒はもちろん、シナモン、八角、陳皮のほか、カルダモンやクミン、さらにはスーパーなどではなかなか見られない甘草(かんぞう)まで揃っているのだそう。口に入れた時に感じる爽やかな香りや、複雑な余韻はこうして生まれているのですね。
調味料だけではなく餃子の皮も手作りしているのもこのお店の特徴。市販のものは作りたてのものに比べるとどうしても固くなってしまい食感が違ってくるし、それに香りが全然違うのです。SNSで「明日は作りたての餃子があります」と告知すると、それを目掛けて訪れるお客さんもいるのだとか。
「時間と手間はかかるけど、自分で作ればコストが下がるのでお客様にリーズナブルに提供できるんです。でも大変だから本当は担々麺と麻婆豆腐の専門店にしたいんですけどね」
と、笑いながら話してくれた吉冨さん。そう言いつつも取材後、すぐに仕込みに取り掛かるその背中はお店を愛してくれているお客さまへの想いにあふれていました。