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麺屋寿(めんやことぶき)

公開:2026.05.21
著者:赤井恒平

麺屋寿(めんやことぶき)

 

誰かの新定番になるような醤油ラーメンを目指して

醤油、味噌、塩、とんこつ…世の中にラーメンの味は数あれど、東京で最もスタンダードな味といえばやはり醤油なのではないでしょうか。西武新宿線上井草駅にある麺屋寿は、そんな醤油激戦区・東京にて「煎酒(いりざけ)醤油」「吟上醤油」という2種類のラーメンで勝負をしているお店です。

「煎酒醤油」は、醤油がまだなかった頃に使われていた調味料・煎酒を使った一杯。ほんのりと感じる梅干しの酸味と、現代の醤油が混ざり合うちょっとした違和感が味に奥深さを与えています。最初の一口と、後味の違いを楽しめるのが特徴です。

一方、「吟上醤油」は九州特有の甘み、旨みをいかしたブレンド醤油を使っているのが特徴。香りを楽しみ、口の中に広がる旨みを楽しんでいるうちに気がつくと食べ終わっている。そんな一杯です。

「看板メニューは煎酒醤油ですけど、自分にとって大事なラーメンは吟上醤油なんです」と、話してくれたのは店主の秦(はた)さん。大事にしているのはバランスなのだそう。例えば、麺屋寿で使うスープは鶏ガラのみ。最初はパンチを出すために豚も入れていたのですが、豚が強い分、醤油を想定より増やさなけらばならかなかったのです。そうするとしょっぱくなってしまい、食べているうちに飽きがきてしまう。だから思い切って鶏ガラだけに絞ったのです。この、引き算の考え方ができるのは、秦さんの経歴に秘密がありました。

和食の世界から、ラーメンの世界へ

和食の世界から、ラーメンの世界へ

福岡出身の秦さんは、16歳から和食の道へ入りました。そこで、出汁の取り方、味の作り方など和食の基礎を学びました。そのまま福岡で自分のお店を持とうと考えた秦さんは、お店を出すならとんこつラーメンを出せた方が良い、と新規出店するラーメン店に勤めることに。そのお店は店舗営業以外に全国各地のイベントに出店もしており、そこで様々なラーメンと出会って、その奥深さに魅了されていったのです。

すっかりラーメンの虜になってしまった秦さんは、和食の経験を最大限に活かせる醤油ラーメンのお店を始めることを決意しました。福岡でお店を持つことも考えたのですが、自分のラーメンがどこまで受け入れられるのかを、醤油ラーメンの街・東京で試してみようと思ったのです。

「だから、ねりコレに選ばれたことが本当に嬉しかったんです。自分の醤油ラーメンが東京で認めてもらえた一つの証ですから」と笑顔で話してくれた秦さん。そして、麺屋寿は2026年4月で丸3年を迎えました。誰かの定番になれるラーメンを提供したい、という秦さんの想いは着実に東京の地に根付いています。