1から始めた独自の豆腐作り
創業66年の歴史を持つ豆腐屋さん「むさし屋豆腐店」。店主の名古屋直登さんは現在40歳で、大学3年生の時に先代が体をこわしてしまったため、事業を受け継ぎました。とはいえ、全く家業に関わっていなかった直登さんは豆腐の作り方はおろか、店の中にある機械の名前すら分からない状態。まずはお世話になっていた機械屋さんに使い方を教えてもらうところからのスタートだったのです。
当時のむさし屋豆腐店は学校給食などに納めていたので作る量も多く、少人数でやっていくには大変でした。そこで、少しずつ豆腐のことを理解してきた直登さんは、事業の方針を大きく転換したのです。それは量ではなく質の追求。まずは使用する大豆を国産に変え、良いものを直接お客様に届けるため店頭販売に力を入れていきました。さらに、国産大豆の中でも味に個性のある在来大豆の農家さんを訪れて厳選。豆の特徴を活かし濃厚な豆腐を作るため、製造方法も研究を重ねました。大豆の個性を感じることができる豆腐を作るには濃い豆乳が必要なのですが、濃度の高い豆乳は固めるのが難しい。そこで、直登さんは、豆を水につける時間、豆を砕く細かさ、絞る時の圧力まで、その無限の組み合わせの中から生まれたのが「寄せ豆腐」なのです。
「自分が作りたい豆腐が見えてから、この仕事が楽しくなりました」と話してくれた直登さん。SNSなど情報発信が個人でもできるようになった時代だからこそ、本当に価値のある美味しいものをつくれば、お客さんは必ずきてくれるという自信があったのだそう。その言葉通り、今では美味しい豆腐を求めてたくさんの人が毎日お店に訪れます。そして2023年、直登さんのたゆまぬ努力と、農家さんや機械屋さんたちみんなのサポートがあって生まれたむさし屋豆腐店の寄せ豆腐は技術の高さが評価され、全国豆腐品評会で日本一となる農林水産大臣賞を受賞したのです。


