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創刊から38年続く、練馬・板橋のタウン誌「月刊Kacce(かっせ)」【後編】月刊Kacceの歴史と、地域とのつながり 画像

ライター:協同クリエイティブ さん コラム

創刊から38年続く、練馬・板橋のタウン誌「月刊Kacce(かっせ)」【後編】月刊Kacceの歴史と、地域とのつながり


今回は、「月刊Kacce」が創刊されたきっかけや歴史に迫ります。どんな人たちがどんな風に作ってきたのか、制作現場はアナログからデジタル、そしてクラウドの時代へ。これまで発行してきた460号分を振り返り、38年の歴史とともに、変わらぬ思いや地域とのつながりがギュ〜ッと詰まったKacce特集の【後編】です。

【前編】「月刊Kacceの制作現場」と合わせてご覧ください!

創刊号から最新号まで全部並べてみた!

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田中さん(左)と生田さん(右)


460冊を積み上げると、実に圧巻ですね! 今回も代表取締役の田中なおみさんと、Kacce編集長の生田佳子さんに語っていただきましょう。

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「月刊Kacce」のバックナンバーを見つめる ねりこ

タウン誌「月刊光が丘」の誕生秘話

タウン誌「月刊光が丘」の誕生秘話 画像

「月刊光が丘」の創刊号は1984年1月号。B5版で表紙は2色刷り、本文は白黒でした


「2013年に2代目の代表取締役になりましたので、『月刊Kacce』のルーツについては先代社長の故・佐藤一水から聞いた話などを元にお話します」(田中)

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創刊から間もない頃のスタッフを描いたイラスト


「『月刊Kacce』の前身は『月刊光が丘』です。発行元の株式会社協同クリエイティブは、印刷・企画制作の会社として、1978年に先代が板橋区高島平で創業しました。光が丘団地のマンション建設が進むにつれ、先代のご家族やご友人が移り住み、団地の主婦たちから『周囲の情報がわからないので、光が丘にも高島平にあったようなタウン誌がほしい』という声で、誕生したのがきっかけです」(田中)


「38年前は光が丘IMAや図書館などもなく、“陸の孤島”なんて言われていたんですよね」(生田)


「初代編集長やスタッフは全員地元の主婦で、編集未経験者ばかり。タウン誌作りは手探り状態で始めたとのことです。あったのは印刷ノウハウと、スタッフの情熱!」(田中)


「当時は、女性が作るタウン誌として注目され、新聞社からも取材を受けたそうです」(生田)

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「月刊光が丘」が取り上げられた毎日新聞(1985年・左)、産経新聞(1994年・右)


「創刊前の広告営業では『本当にタウン誌が出るのかわからないのに、広告は出せない』などと言われ、相当苦労したと聞いています。発行を重ねるうちに信頼を得て、長期契約をしてくださるお客様が少しずつ増えていきました。それでも収入は厳しく、何度もやめようと思ったことがあるようですが、読者や広告主のおかげで今があります。踏ん張って続けてきた先代や歴代スタッフには感謝の念しかありません」(田中)


「1990年、第5回NTT全国タウン誌フェスティバルでは、『月刊光が丘』が全国526誌の中からタウン誌大賞を受賞しました。新しい街・光が丘で子どもから大人まで身近な人が大勢登場し、広く地域との関わりをもった生活密着型の編集方針が評価されました」(田中)

「月刊Kacce」改題に込めた思い

「月刊Kacce」改題に込めた思い 画像

「月刊Kacce」のロゴマーク

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記念すべき「月刊Kacce」創刊号(1997年1月号)の表紙と裏表紙


「配布エリアを広げようということで、1997年1月号に『月刊光が丘』から『月刊Kacce』にリニューアルしました。B5版から持ち運びしやすいコンパクトなA5版に。誌面のレイアウトから広告サイズまでデータをすべて作り直すことになったので、朝も夜もなく気力だけで作業をしていました」(田中)


「Kacceという名前は、社内コンペで決まりました。『地域活性化』と野球の応援の掛け声『カッセ、カッセ』をかけ合わせた造語です。地域を応援するというコンセプトそのものなんです」(田中)

記憶に残る特集や人気の企画は?

記憶に残る特集や人気の企画は? 画像

「特集グラントハイツ」の誌面と表紙(1988年6月号・月刊光が丘)


「読者から最も反響が大きかったのは、光が丘の過去を伝える『グラントハイツ』の特集記事です。当時を知る人を探したり、座談会を企画したり、写真を集めたりと、半年以上かけた総力特集です」(田中)


「やはり地域の歴史などの特集が人気でしたね。記憶に残るものをピックアップしてご紹介します」(生田)


●光が丘から見える山々(1985年12月号・月刊光が丘)
●特集グラントハイツ(1988年6月号・月刊光が丘)
●特集 掩体壕(1990年7月号・月刊光が丘)
●幻の兎月園を探る(1992年10月号・月刊光が丘)
●幻の石神井ホテル(2017年11月号・月刊Kacce)
●ありがとう! としまえん(2020年8月号・月刊Kacce)


「また、新年の人気企画『間違い探しクイズ』は、1997年1月号にスタート。豪華なプレゼント付きで毎年1月号の恒例企画となりました。応募数は通常の読者プレゼントの2倍にもなるんですよ!」(生田)


「光が丘図書館では、『月刊光が丘』から『月刊Kacce』までの全巻が閲覧できるので、興味のある方はぜひ読んでみてください。読者の方から『創刊号から全巻、保存しています』と投書をいただいたことがあり、これには本当に驚きました!」(田中)

制作環境は激変。パソコンなしの手書き原稿からデジタル化へ

制作環境は激変。パソコンなしの手書き原稿からデジタル化へ 画像

木造風呂なしアパートにあった頃の編集室(練馬区旭町、1988年)


「私が入社したのは1988年。当時の会社があったのは練馬区旭町で、老朽化した木造アパートで、錆びついた階段を上った2階に編集室がありました。先代のご兄弟が使用していた木製の勉強机を仕事机として使っていたり、食卓用の大きな丸テーブルが会議用に使われていたり、アットホームな雰囲気でした」(田中)

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「月刊光が丘」の制作はアナログでした


「1989年に成増の事務所に引っ越しました。当時の制作はアナログで、パソコンやデジカメもありませんでした。FAXがあるだけで便利だなあと(笑)。トレスコ(トレーシングスコープ)という暗幕の中で、汗をかきながらロゴなどを印画紙に焼いていたことを覚えています」(田中)


「写真にトレーシングペーパーをかけてデザイナーが定規を使ってレイアウトし、手書き原稿に書体や級数、行間の指定をしてました。それらを文字を組む写植屋さん、フィルムを作る製版屋さん、そして印刷屋さんへ。電車や車で行き来しながら、今では想像もできないくらい手間暇かけて『月刊光が丘』を作っていたんです」(田中)

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アナログ時代の写植指定用の「級数表」と「歯送り表」


「『月刊光が丘』の配布日の朝には、先代が車で印刷所から引き上げてくるのを待ち構えて、みんなで一斉に自転車やスクーターで朝から晩まで配布をしていました。慣れないうち、方向音痴の私は光が丘の煙突を目印にして、どれだけ助けられたことか…」(田中)

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社内忘年会で焼き鳥を食べる先代の佐藤さん(左)と田中さん(左)。佐藤さんは明るくエネルギッシュな人で3日徹夜の武勇伝も!?


「先代が新しいもの好きだったこともあり、Macの導入も早い方でした。1989年前後にDTP(Desktop Publishingの略)化し、各地のタウン誌の仲間がデジタル化の見本として、よく見学にいらしてました」(田中)


「デジタル化といってもデータが重かったせいか、初期のMacは保存に数時間かかったり、時々ファイルが壊れることも…」(田中)


「コロナ禍でテレワーク環境も整い、より作業の効率化が進みました」(生田)

紙だけじゃない、SNSや動画、Webでも情報発信!

紙だけじゃない、SNSや動画、Webでも情報発信! 画像

動画「Kacceスタッフトーク」での配信(上)や、練馬放送の番組内で毎月Kacceを紹介(下)


「紙媒体のKacceを核として、動画配信、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSや、地元のインターネットラジオでも地域情報を発信して、いろいろな可能性にチャレンジしています。誌面だけでは伝えきれない取材や制作現場の裏話、広告主の紹介など、『月刊Kacce』と合わせて見てもらったら10倍くらい楽しくなりますよ! 1人でも多くの方に、Kacceを知ってほしいと思っています」(生田)

地域と未来のために、今できることを!

地域と未来のために、今できることを! 画像

地元中学生が職場体験に来た時の様子(左)、地元の高校で社会人講師として登壇(右)


「地域応援の一環として、毎年、中学生の職場体験を受け入れています。今年は東京商工会議所練馬支部から声をかけていただき、地元の高校でキャリア教育授業を行いました」(田中)


「また、Kacceの表紙展や文章講座、地元ホテルの見学ツアーなど、今まで地域でさまざまなイベントも行ってきました。読者や広告主の皆さまに喜んでいただけるような企画をこれからも考えて、月刊Kacceの発行とともに地域の活性化につなげていきたいです」(田中&生田)


——ありがとうございました。時代とともに変わっていくものもありますが、地域を応援する“Kacceの心”は、ずっと変わらないんですね。Kacceを読むと街や人の魅力を再発見できて、地元がますます好きになります!


「これからもKacceを楽しみにしてるのにゃ!」(ねりこ)

■株式会社協同クリエイティブ(月刊Kacce編集室)
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取材協力:ねりま観光センター&ねりこ