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「酉の市」完全ガイド〜練馬大鳥神社で”福”をトリ込もう!〜  画像

ライター:協同クリエイティブ さん イベント

「酉の市」完全ガイド〜練馬大鳥神社で”福”をトリ込もう!〜 


11月の練馬の風物詩といえば、酉(とり)の日に行われる練馬大鳥神社の「酉の市」。2019年は二の酉まであり、一の酉が11月8日(金)、二の酉が11月20日(水)です。
神社の宮司さんや商店街の関係者の方々に、練馬ならではの酉の市の楽しみ方や、当日までの準備や苦労などをお聞きしました。これを読めば、酉の市のポイントがバッチリわかるので、運気上昇、間違いなし?!

練馬駅周辺が1年のうちで最大級に賑わう日!

練馬駅周辺が1年のうちで最大級に賑わう日! 画像

酉の市が立つ練馬大鳥神社は、西武池袋線または都営大江戸線の練馬駅から歩いて2分、南口商店街の一角にあります。千川通りまで並ぶ参拝客の列は数十メートルにもおよび、「最後尾」のプラカードを掲げた警備員が出動するほど。開催日の天候や曜日によって変動はあるものの、1日の人出は1万〜2万人! 
練馬駅周辺が熱気に包まれる、1年でいちばんアツい日なのです!

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また、神社周辺の道に所狭しと立ち並ぶ露店や、商店街の出店は合わせて約240店。縁日を楽しみに訪れる家族連れや地元の子どもたちも多く、「あの店のシャーピン(餡餅)がうまい!」「おとり様名物のくまで焼きと貝の串は必ず買う」など、それぞれお気に入りの店が決まっている常連さんも多いそう。

これだけの賑わいですから、商店街の飲食店を利用する場合は、予約をしておくのがオススメです。

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酉の市について、さっそく練馬大鳥神社の宮司・磯部豊三郎さんにお聞きしました。

「酉の市の発祥は、足立区にある花畑(はなはた)大鷲神社。日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東夷征伐(とういせいばつ)の祈願をし、無事に終えてお礼の祈願をした際、鳥を放ったとか熊手を奉納したなど諸説ありますが、これらを祀る花畑大鷲神社で立っていた市が、“鳥”がつく神社で酉の市として広まったのです。栄えるようになったのは江戸時代になってからです」

酉の市は全国的なものかと思いきや、東京を中心とした関東だけの風習。関西で商売繁盛を願うお祭りは、1月に行われる十日戎(とおかえびす)が有名です。

都内の酉の市は、浅草や目黒、花園などが規模も大きく人気ですが、練馬の賑わいもなかなかのもの。

ちなみに、練馬区内では石神井の大鷲神社(練馬区石神井町3-25-36) でも酉の市が行われます。練馬大鳥神社よりもアットホームでこぢんまりとしているため、混雑を避けたい人、ちょっと気分を変えて酉の市を楽しみたい人にはおすすめです。

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「練馬大鳥神社では、酉の市の前夜18時から祭礼を行い、御札に魂を入れます。酉の市は翌日10時からですが、実は、日付が変わった0時〜1時の1時間だけ神社を開放しているんです。一番乗りでお参りしたいという熱心な参拝客が、毎年40〜50名ほどいらっしゃるので」

0時の合図の一番太鼓は、磯部さんが鳴らしているそうですよ。
誰よりも早く年末の“福”をつかみたい方は、一番ドリ(笑)を目指してみてはいかが?

江戸の“粋”を感じながら、熊手を買って商売繁盛!

江戸の“粋”を感じながら、熊手を買って商売繁盛! 画像

ご利益がある縁起物として酉の市に欠かせないアイテムが、熊手。
その形が鷲(わし)の爪に似ていることから「運をわしづかみする」、あるいは落ち葉をかき集めるように「客をかき集める」とたとえられ、運や福、商売繁盛を招くと言われています。最初は小さな熊手を買って、年々大きなサイズの熊手に買い換えていくのが習わしとなっています。

練馬大鳥神社では、毎年決まった5軒の熊手商が出店。店によって飾りやデザインが違うので、お気に入りの1軒を決めて、同じ店で買い換えていくのが良いそうです。

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価格は大きさによって1,000円くらいから数十万円まで幅があるそうですが、「買った(勝った)!」「まけた(負けた)!」と値切り交渉をし、値切った分はご祝儀として渡すのが“粋な買い方”。

例えば10,000円を8,000円に値切ったら、2,000円は「ご祝儀です」と渡します。買う方も売る方もちょっとイイ気分になれる、江戸っ子の“粋”を楽しんでみましょう。

そして、熊手を買うと「いよぉ〜お」と景気付けの手締めをしてもらえるのが、酉の市のお馴染みの光景。あちこちの店から、威勢のいい三本締めの掛け声が飛び交うと、境内の活気はますます上がります!

ちなみに、関東と関西では、熊手の向きが逆なんだとか。関東は熊手の内側に飾りが付いていますが、関西では熊手の外側に付いているそうです。

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露店の縁起熊手とは別に、毎年、神社の社務所では、可愛らしい竹熊手に神札と稲穂が付いた「開運熊手御守」(1,000円 ※材料費の高騰・消費税増税により2019年酉の市から改定)が授与されています。露店の熊手と違うのは、お札に御霊(みたま)が込められていること。そのため、前年の熊手はきちんとお祓(はら)いをしてから、お焚き上げをしているそうですよ。

お神楽と投げ餅で、非日常体験!

お神楽と投げ餅で、非日常体験! 画像

さらに酉の市を彩るのは、神話の世界を再現したストーリーを笛や太鼓の響きが盛り上げる、里神楽(さとかぐら)。神楽殿で1日に5回(14時/16時/19時/20時30分/21時30分頃)上演されます。一の酉と二の酉では上演されるプログラムが異なり、さらに年によっても内容が違うそう。ただ、最後の演目「山神(さんじん)」だけは毎年、毎回同じだそうです。

この機会に、お神楽の世界に触れてみてはいかがでしょうか。
あまり馴染みがないという方でも、舞台の前に掲示されているあらすじを事前に読んでおけば、より楽しめるはず!

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ラストの「山神」が終わると、天狗の面をつけた「山の神・福の神」が舞台浄(きよ)めを舞い、クライマックスの投げ餅タイムへ。気付けば、神楽殿の前には大勢の人がっ!!

紅白の丸い餅が神楽殿から勢いよく放たれるたび、縁起物の祝い餅をもらおうと手を伸ばす人の波がうねり、ボーッとしていると危ないレベル(笑)。メガネやカメラを飛ばされた人もいるそうで、その熱気に圧倒されつつ、幸運は簡単に手に入るものじゃないんだと実感しました…。

奉納提灯の舞台裏

練馬駅南側の千川通りを埋め尽くすのは、400個にもおよぶ奉納提灯(ちょうちん)。11月1日から、夜には灯りがついて華やかさを増しますが、この提灯、誰がどうやって設置しているのでしょうか? 
酉の市を支える商店街の「おおとり会」を束ねる清水利明さんにお聞きしました。

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「おおとり会は練馬南口の6商店会の役員を中心とした有志から成り、提灯の配列や取りまとめなどを担っています。提灯の設置は、地元のイナダ電工さんにお願いしていますが、提灯を垂木(たるき)に取り付ける際は、商店会のメンバーも集まり、神社の境内に提灯を並べて準備しています」

今までは提灯を付けた垂木の支柱を電柱に設置していましたが、電柱の地中化により、今年からはそれができなくなったとのこと。支柱をどうやって立てるかが悩みどころで、地元の建設会社に依頼しているそうです。
脈々と続く伝統的な行事の陰には、時代の変化に対応していく苦労もあるんですね。

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約20年、提灯の設置や配線を一手に引き受けている、イナダ電工の稲田亮二さんにもお話を伺いました。
「提灯の設置には、境内に3日間、千川通りに2日間で、合計4~5日くらいかかります。とにかく提灯の数が多く、酉の市の期間中に球切れを起こしてしまうので、毎日のチェックは必須。切れているところを見つけたら、はしごを使ってすぐに直しています」

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「雨や風でも提灯が落ちないようにしっかり設置して漏電にも気を付けていますが、期間中は気が気ではありません。酉の市当日は、提灯の灯りが全部付くことを確認したら、ずっと会社に待機しているので、無事に終わるとホッとしますね」

現在は白熱灯だそうですが、これがLEDに変わったらかなり楽になるかも?!

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また、酉の市の宣伝のため、ここ数年は西武鉄道の協力も得られるようになりました。西武池袋線練馬駅の中央改札口に飾られた大きな提灯や熊手を見ると、酉の市に向けて気分が盛り上がりますね!

練馬大鳥神社の酉の市は、この人がいないと始まらない!

これほどまでに大きな行事ですが、おおとり会のメンバーの協力を得ながら主に準備を進めているのは、やっぱり練馬大鳥神社の宮司を務める磯部さん。
酉の市が終わり、年が開ける頃にはもう次の準備が始まるのだとか。

「毎年、同じように進めているだけですが、警察や消防と連携しながら周囲に迷惑をかけることのないよう、とにかく安全に執り行うことを最優先に考えています」

練馬の酉の市の変遷を伺ってみると、
「昭和40年代前半までは、千川通り沿いにも瀬戸物屋やバナナの叩き売り、がまの油、七味唐辛子などの露店が並んで賑わっていたんですよ。

変わったといえば、昔の参拝客はきちんとした和装が中心でしたが、今の人たちはだいぶラフな服装になりましたね。また、最近では外国の方もずいぶん増えました」とのことでした。

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また、ここ3〜4年の御朱印ブームで、酉の市の日に御朱印をもらいに来る人が増えたため、ちょっぴり忙しくなったそう。

「普段は、中井にある御霊神社の宮司と兼務しているため、いつも練馬大鳥神社にいるわけではないのですが、酉の市以外にも『8』のつく日は社務所を開けて御朱印を受け付けていますので、ぜひいらしてください」
これは貴重な情報ですね! 

また、参拝客は、午前から昼にかけては年配の方が多く、夜は仕事帰りの人や、会社でまとまって来る人が多いため、「夜の参拝は長蛇の列で混雑するので、ご参拝は日中がおすすめ」だそうです。

「私の使命は、福を分かち合うこと」と、話す磯部さん。
今年は、令和になって初めての酉の市。気持ちも新たに、令和の“福”をたっぷりと取り込みたいところですね。
ということで、最後にワンポイントアドバイスです!
買った熊手は正面を向け、高く掲げて歩くとより大きく“福”をかき込めるそう。自宅でも高めの位置に飾っておくとよいそうですよ。

練馬の酉の市で、皆さまがたくさんの幸せをつかみ取って、新たな年を迎えられますように♪




■ 練馬酉の市・秋の大祭
 練馬大鳥神社(練馬区豊玉北5-18)  
 一の酉:2019年11月8日(金)  10時〜22時
 二の酉:2019年11月20日(水) 10時〜22時
 
 御神楽奉納:各日14時〜/16時〜/19時〜/20時30分〜/21時30分頃〜投げ餅